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『ネパール・ヒマラヤ花紀行(4) - ロールワリン谷の薬用植物(前編)』
 
●English

はじめに
 今回案内するロールワリン谷Rolwaling Valleyは、中央ネパールのチベットとの国境付近に位置する高山植物が咲き乱れる美しい谷である。この地は、外国人の立ち入りに関して特別な場合を除き、登山許可以外の方法では認められていない。現在でも入域制度について流動的である。私達が1985年ロールワリンで最標高のナー村Na Gaonを訪れた時には、民家が数軒しかなくシェルパ族の2家族が同居して住んでいただけで「まさにヒマラヤの秘境」と言える。ロールワリン谷の北方には美しいロールワリン・ヒマラヤがそびえたち最高峰ガウリサンカール Gaurisankar(7134m) を筆頭に、ヌンブール Numbur(6937m)、チョブツェ Chobutse(6685m)、パルチャモ Parchamo(6273m)など数多くの美しい山々が連なっている。
実際、この地域に外国人が入り学術調査を行うためには、現在でも煩雑な手続きが必要である。首都カトマンドゥからの距離はあまりないもののネパール国内の秘境と呼ばれている他の地域と比較しても、食料が手に入り難く下流の村からポータを雇って調査に必要な物資以外に重い食料を運び上げなければならないためアプローチが大変難しい。しかしながら、この谷には手付かずの自然がそっくり残っており、険しい山道をぬけた後に現れるロールワリン谷は疲れも吹き飛んでしまうほど美しく、ヒマラヤ好きな者にとって魅力のある地であることに間違いはない。

調査地概要
この調査における最終目的地は中央ネパール北東部、ロールワリン・ヒマラヤの山岳民族シェルパ族が住むナー・ガオン(ナー村)である。また、ナー村から、半日ほどかけてゆっくりと歩きながら東に標高を上げていくと氷河湖ツォ・ロルパTsho Rolpaが姿をあらわす。さらに先を進めると、あたり一帯が氷河の高い壁で囲まれたトラシ・ラブツァTrashi Labtsa (5755m)峠が行く手を拒む。登山ロープを使ってその峠を無事越えることが出来れば、前報で紹介したゴーキョ地方に抜けることが出来る。そのため、ナー村から先の山岳地域は危険が伴う難路であるが、植物探索を専門に行う私達にとって大変魅力的なコースでもある。ところでナー村へは、首都カトマンドゥからのアクセス方法として、まずバスを使ってボテ・コシ川(Bhote Kosi = チベット系民族が住む川の意)上流の中国国境の町コダリKodari (1663m)の約35Km手前のバリピ村Baliphi にあるボテ・コシ川に掛かる橋を渡り、バスに揺られながら東に標高を上げ、終着駅のチャリコットCharikot (1998m)に向かうのが一般的である。このチャリコットがロールワリンを目指す最初の入り口となる場所で、最終目的地であるナー村にはここから徒歩で片道10日ほどかる。

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美と健康を科学するフレグランスジャーナル社FRAGRANCE JOURNAL LTD.から発刊されているアロマの機能性(生理・心理的作用)と効用の学際的専門誌・季刊(2,5,8,11月) 「AROMA RESEARCH 第8号」に収載されています。
http://www.fragrance-j.co.jp/books/info/aroma/aro-research2.html

Abstract
We investigated medicinal herbs in Rolwaling-Himalayas of Central Nepal for a month from April to May in 1985. This survey was achieved with a joint team between 3 Nepali stuffs of Department of Medicinal Plant in Kathmandu and me as a member of JOCV(Japan Overseas Cooperation Volunteers) Kathmandu office.
We surveyed the habitats, recorded indigenous knowledge for traditional medicinal plants, and took photographs of these plants and plant habits from Makaibari(2055m) to Simigaon(1950m) through Mt. Kalinchok(3359m). And we heard several information as usage, effect, local name from the healer of Sherpa, and of Tamang tribes. They live on Tibetan culture or on Hindu culture in this area.
As a result, about 30 medicinal plants consisting of more than 280 different species were occurred by our members.
We kept photographs with Photo CDs including their 100 photos in the Medicinal Plant Garden of Kitasato University, Japan.
This issue is the first part of Himalayan Medicinal Herbs in Rolwaling Valley of Central Nepal. And the latter part continues in the next issue.

Key Words: Rolwaling-Himalayas, indigenous knowledge, healer, medicinal plant

Survey of Wildflowers in the Nepal Himalayas (4)
Himalayan medicinal herbs in Rolwaling valley of Central Nepal (the first part)

Takashi Watanabe 1) and Kuber Jung Malla 2)
Medicinal Plant Garden, School of Pharmaceutical Sciences, Kitasato University 1)
Royal Botanical Garden, Department of Plant Resources, Godawari, Lalitpur, Nepal 2)


Fig.1「シャクナゲ (Rhododendron spp.)の林を背にしたラムバハドゥル・タマンさん」


Fig. 2.xls
「調査地名およびその標高(m)」
win/mac

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