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『アマゾン花紀行(1) - アマゾン上流域ペルーアマゾンの民間療法にみる植物利用について』
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はじめに

 アンデス山脈に源を発する世界の大河アマゾン。広大なアマゾニア(アマゾン川流域の熱帯地方)の中でも、ペルーはその源流、上流域にあたり、国土の約6割がアマゾン地域で占められている。熱帯湿潤林を中心にしたペルーの東部低地は多様な生態系に恵まれ、古くから植物が暮らしに役立てられてきた。ペルー・アマゾンには約60の先住民族グループがいるといわれ、奥地の村落では、いまだ伝統的な治療師が地元住民の健康管理に携わり、薬草などの民間療法が用いられている。病院や医療設備、医師などの専門家、医薬品が不足し、同国厚生省の伝統医療研究所によると、国民の約6割が伝統医療に頼っていると推定される。医療や経済事情もあるが、多くの人にとって は昔ながらの習慣でもある。1991年から1998年の間、筆者がペルーアマゾン滞在中、アマゾン川本流が分岐するペルー北部の都市イキトスの近郊、支流ウカヤリ川の都市プカルパの近郊で視察した、現地で使われていた薬用植物やその使用法をレポートする。

●薬草と使用例
 ここでは、治療師に使われていた事例をいくつか紹介する。
1. 森の中で薬草を探す
イキトス近郊タワヨ村で森に薬草採りに出かける治療師Aに同行し、説明を受けた。
表皮にトゲのような突起物が出ているあるトウダイグサ科の高木カタワ(フーラ・クレピタンス Hura crepitans Linn.)- Fig. 1&Fig. 2 の表皮に傷をつけると、クリーム色のミルクのような樹液が出る。これには毒があり、毒で毒を制すことから、毒蛇に噛まれた時に傷口につける。梅毒やハンセン病には、樹液を煮詰めて粉を作り、サトウキビ汁と混ぜて日に三回飲む。カタワの表皮にはトゲのない種類もある。コカノキ科のチュチュワシ(エリスロキシルム・カトゥアバ Erythroxylum catuaba A. J. da Silva)のあるところに行く。着いてみると、密林の一画が切り開かれ畑を作るために焼かれていた。最近まであったチュチュワシの大木は切り株だけになっていたが、赤い根の部分がまだ生きているといい、山刀で取って持ち帰る。これを小片に砕き粉状に削って水にまぶすと、赤い汁になった。なめただけで苦くて渋いが、血をきれいにして、リューマチに良く、強い体にするという。 強い薬で体が熱くなるので水浴と食餌が必要だが、酒に漬けた健康酒にすれば気軽に飲める。オオバヤドリギ科の半寄生植物スウェルダ・コン・スウェルダ {オリクタントゥス・アルヴェオタトゥスOryctanthus alveolatus (H. B. K) J. Kujit}は、葉と枝を煮た液は骨折や脱臼の治療に用い、樹液は骨を丈夫にする。 治療師は骨折をした患者に煎じた液を飲ませていた。また、チュチュワシや他の数種の植物と混ぜて合わせ、体を強くするという飲料も作っていた。上部の方に枝葉を付けた高木のタワリの樹皮を山刀で採った。タワリはノウゼンカズラ科タベブイア属(Tabebuia sp.)植物で、昔からリウマチや真菌症(カンジダ)の治療に使われていた。最近では癌の治療にも用いられているという。あまり大きくないワカプの樹皮を採り束ねて持ち帰る。肝炎、黄疸によいという。樹皮を叩き水で煮て早朝に飲む。ニンニクのような匂いがするノウゼンカズラ科のアホ・サッチャ {シュードカリマ・アリアセウム Pseudocalymma alliaceum (Lam.) Sandwith }の若木を根から持ち帰る。治療師はアホ・サッチャの根と茎をこそいで酒に漬けた。これを毎朝コップ一杯飲むとリューマチに良いという。

2. 3種の樹液
 市場の薬草売り場では、樹皮、ハーブ、根、種、樹液、薬草が漬けられた瓶など、 多種多様な薬用植物が並ぶ。樹液の中でも、よく知られる樹液3種がある。トウダイグサ科クロトンの仲間のサングレ・デ・グラード“喜びの血液”というこの植物(Croton palanostigma Klotzsch, Croton lechleri Muell. Arg., Croton draconoides Muell. Arg.)の樹液は、濃いワインのような液体で、手に取って擦ると、たちまち乳白色のクリームになる。これが外傷薬になり、患部に塗って使う。また、コップの水に2,3滴垂らしたものを喉のうがい薬になり、飲むと胃潰瘍に効き血液の循環を良くする。女性の性器を洗うと炎症が防げるともいう。筆者らは、アチュアル族が住むマラニョン川支流パスタッサ川上流奥地の村を訪ねた折、この樹液は業者から多数のドラム缶で買い付けされていた。樹皮が白いトウダイグサ科イチジクの仲間のオヘ(Ficus anthelminthica Mart.)は下剤や虫下しとして知られている。樹液をさとうきびジュースなどに入れて飲む。服用する時は、食事制限が必要とされているが、既にカプセルなどに製品化されている。また、歯痛や外傷にも良いと聞いた。
 蜂蜜のようなあめ色の、ほのかにヒノキのような香りがするマメ科のコパイーバ (コパイフェラ・オフィシナーリスCopaifera officinalis Linn.)の種子油は、内服すると潰瘍に、外用薬として蚊などの忌避剤になり肌にもよい。ブラジル ・アマゾンでも非常にポピュラーで、薬用石鹸などの商品になって売られている。アマゾンでは、この種子(Fig. 3)から製油が採取される。

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美と健康を科学するフレグランスジャーナル社FRAGRANCE JOURNAL LTD.から発刊されているアロマの機能性(生理・心理的作用)と効用の学際的専門誌・季刊(2,5,8,11月) 「AROMA RESEARCH 第3号」に収載されています。
http://www.fragrance-j.co.jp/books/info/aroma/aro-research2.html


Abstract

We investigated Amazonian medicinal herbs used on the Peruvian Folk Remedy upper Amazon River from 1991 to 1998. This survey was achieved with our joint reports and by team with Peruvian local members. We surveyed the habitats, recorded the traditional knowledge for a folk remedy, plant lore, and took photographs of these plants and plant habits upper Amazon river (500 m). And we heard several information as usage, effect, local name from the healer in the suburbs of Iquitos by Tahuayo river and in the village near Pucallpa by Ucayali river. As a result, it is reasonable to conclude that local healers use about 50 medicinal herbs consisting about 1,516 different species of medicinal plants in northwest Amazon area (Peru, Ecuador, Colombia, Brazil)1, 2).
We kept photographs with Photo CDs including their 1000 photos in the Medicinal Plant Garden of Kitasato University, Japan.

Survey of wildflowers in Amazon (1)
Amazonian medicinal herbs used on the Peruvian Folk Remedy upperAmazon River

NAGATAKE Hikaru 1) and WATANABE Takashi 2), Photographer and Writer 1) and Medicinal Plant Garden, School of Pharmaceutical Sciences, Kitasato University 2)


Fig. 1●トウダイグサ科の高木カタワ Hura crepitans

Fig. 2●トウダイグサ科の高木カタワ Hura crepitans


Fig. 3 ●マメ科のコパイーバ Copaifera officinalis(種子)

▲UP


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